このマンションを出てほぼ隣接と言ってもいいくらいの距離に小さな公園があるんだ。その道路を隔てた反対側にセブンイレブンがあって、なかなか重宝してるわけ。デカチチは買い物に出て、スマホで連絡取ってるんだが繋がらず。ザラバ終わってパラパラときてた雨も止んだんで、それじゃ、と。
いつも室内で籠りきりになってるから、外の空気を吸わないと体が固まるからな。
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駐車場の横をショートカットして裏手から公園を突き抜けて行くコースが最短距離。いつもは犬の散歩とか数人はいるのに、雨上がりの公園に人気もあるはずもなく・・・
ところがいくつかあるベンチにポツンと女性が座ってた。この最短距離のコースは嫌でもそのベンチの前を通過するわけ。まぁ、普通は通り過ぎるんだが、今日に限ってチラッと顔を除くと、向こうも気がついてこちらを見た。

「あれっ?君は、もしかして野村の営業の・・・?」そういうと、すくっと立ちあがり笑顔になってお辞儀をしてきた。
「どうした?雨に濡れてるんじゃないか?そのベンチ」
「大丈夫です。拭きとりましたから」
「そう・・・でも、どうした?疲れちゃったかな?」
俺がそう聞くと、彼女、なんだか急に笑顔が曇ったよ。そういえばベンチの向こう側にはいつもの白いチャリが止めてある。仕事中なんだ、とすぐにわかった。
「頑張ってるんだ。大変だね。契約獲れた?」
「厳しいです・・・」
「だろうな。いまどき株式投資やってる個人ってそうそういないだろうからな」
「そうなんですよ・・・」

「あの・・・先日は口座の移転、ありがとうございました!」
「はいはい。でも、営業なら時々連絡くれないと。今度は入金させて運用させるのが仕事だよ」
「はい!そうですよね。でも外回りなんで・・・」
「そりゃ自転車じゃ、連絡もできないもんな」
「はい・・・」

寒さも和らいできて、彼女の唇のカサカサもなくなってたな。けれど、顔つきは浮かなかった。
「3月なんで、追い込みだって・・・」
「ノルマ?」
「はい・・・でも全然行かなくて・・・」
「そっかぁ・・・じゃ使わないかもしれんけど、女房というか同居人の口座もつくってあげようか?」
「あっ、先日珈琲を入れてくれた方ですね。いいんですか?」
「いい、と思うよ。というか、いいよ」
「ありがとうございます。助かります」
やっと笑顔が少し戻った感じだった。

ちょっと誘ってセブンイレブンで珈琲を奢った。店の中のちょっとしたスペースで一緒に飲んだ。
確か今年の始め、俺がこのマンションに来てすぐの頃、寒風のなか自転車で飛びこみ営業させられてる彼女が訪ねてきたんだよな。その時、俺は、「証券なんか辞めちゃいな!」なんて結構無責任なこと言っちゃって、そのことでずっと悩んでたらしいんだ。自分がやらされてる外回りの飛び込みも、ほとんど相手にされないし、ポストにチラシ入れようとして叱られるし・・・。第一、本当に株式投資をやってる人はこの1年間で20人くらいしかいなかったって。一日30軒も回ってるのにだぜ!
株式投資なんか・・・もう個人からは信用されてないんだな、とツクヅク思ったよ。

「私、もう少し頑張ってみることに決めました」
「そうなんだ。じゃ、決めたのなら頑張らんとな」
「はい」
「でも、彼氏作って早く寿退社しなさいね 笑」
「ありがとうございます」
「あの・・・」
そう言って彼女はまた、ウルウルになってきた。
「珈琲、ありがとうございます。もう、戻りますね」
「じゃ、連絡してきてよ」
「はい、伺います。いつがいいですか?」

「明日来れば?」
「いいんですか?」
「OK!でも出来れば午後な」
「わかりました。ありがとうございます」
彼女は深々とお辞儀をして公園のほうへ小走りで向かった。

明日、来たら少し話を聞いてみようと思うんだ。どうして新卒で証券なんだか・・・わからんな。投資の知識もまだあまりないし。それでも投信や国債は勧められたけどな(苦笑)。毎日、泣くほど辛いのだろう。今日・・・多分、俺のところに来たんじゃないかなぁ・・・。どうも、今考えるとそんな感じだったような。じゃなきゃ、公園のベンチに座ってないしな。

彼女みてると、娘がだぶる・・・。きっと、辛い思いもしながら懸命に仕事してるんだろうと思うと切ないよ。
 

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